第四章 栄太郎の絵

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松下村塾の庭では、晋作と喜助が気分転換に外へ出て空を見上げていた。 「……喜助、何かあったか?」 「何がー?」 喜助は気の抜けた笑みを晋作へ向ける。 「……何だか嬉しそうだからな」 軽く溜め息を吐いて、幸せそうな喜助の顔を見やる。 喜助はまた、にこにこと満面の笑顔になって空を見上げた。 「文ちゃんと義助がいつも以上に仲が良いから、嬉しくてさー」 ぎこちない雰囲気だった義助と文が、今朝にはいつも通りの二人に戻っていた。 それどころか、いつもよりも仲睦まじくなって、昨日のことは気のせいなのかと思うくらいだ。 「……良いよな、お前のそういうところ……」 いつも他人のことを思って、笑ったり、悩んだり、悲しんだりして……。 「自分を優先させる奴の方が圧倒的に多いのにな……」 「へ?晋作何か言った?」 「いや……」 小声でよく聞こえなかったのか、きょとんとした顔で振り返る。 晋作は急に小っ恥ずかしくなって顔を背けた。すると、塾から一人、ふらふらと足取り悪く出てきたのが見えた。 .
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