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「はぁ…僕って高杉さんや久坂さん達と違って秀でるものとかないし」
ある松下村塾の一日。俊輔は深いため息をついて落ち込んでいた。
「同い年の栄太とも差があるし…自信無くすなぁ…」
「そんなことはないですよ俊輔」
襖を開けて講義室に入ってきたのは、この松下村塾で色々な事を教授している吉田松陰だった。
「松陰先生…」
「俊輔には俊輔の良いところがあります」
俊輔の隣に座って背中をぽんぽんと叩いて宥めた。
「俊輔は周旋家(政治家)のような人になるでしょう。話の筋をしっかり持っていて、皆をまとめる力もあります」
「先生…僕、嬉しいです!そんな評価を貰えるなんてっ…」
俊輔は目にいっぱいの涙を溜め、鼻水もずびずびと音を鳴らしてすすった。
「ほらほら、泣くほどのことではないでしょう?大和男児の涙は最後まで取っておくものですよ。ほら、拭いて……」
(ふ~ん…。評価かぁ)
二人の話を傍らで聞いていた栄太郎は筆を手にとって、半紙に何かを描き出した。
小輔がそれに気付いて近寄って来た。
「栄太、何描いてんだ?」
「あぁ…これは…」
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