第四章 栄太郎の絵

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よく見ると、出てきたのは小輔だった。 「山県どうした?」 晋作が声を掛けると、ぐったりと疲れた顔を見せた。 具合が悪いというよりも、落ち込んでいるというのが当てはまる。 「あぁ…晋作。喜助もおはよ…。俺はどうやら“棒きれ”らしい…」 「棒きれ?」 「何だそりゃ?」 何を言ってるのか分からずおうむ返しをする喜助。晋作も聞き返すが、どうやら小輔には届いていないようだ。 「は…はは。義助が羨ましいぜ…」 小輔はそのままふらふらと松下村塾を離れていってしまった。 「…何だったんだ?」 「義助が羨ましい…ってどういうこと?」 考えてみるが、思い当たるところが沢山あって何とも言えない。 「……中に戻るか。何か分かるだろ」 「そうだね」 晋作と喜助は暗くなっている小輔を背に、松下村塾の中へと入っていった。 .
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