第四章 栄太郎の絵

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「別に贔屓じゃないですよ。僕としては的確に四人を評価してると思うんだけどな」 栄太郎は不満そうに口をへの字に曲げて言った。 「どこがだ……」 「まぁまぁ晋作。この暴れ牛はただ暴れてるだけではなく、ちゃんと意味があるんですよ」 松陰が宥め、栄太郎も晋作に説明するように絵の暴れ牛を指差して話し始める。 「そうですよ。ほら、高杉さんのこの暴れ牛は鼻輪がついてないでしょう?」 「そういえば…」 横にいた喜助が顔覗かせて絵を眺める。それにつられて、他にも数人近寄ってきた。 「これは誰にも縛られず、形にはまったことをしない、出来ない人ということ。常識はずれで他人と同じことはしないという意味」 自分が先生になったように語り始める栄太郎。 「他人と同じことをしても面白くないし、何より個性がない」 暴れ牛の絵に指を差しながら晋作へと視線をやると、真剣に栄太郎の話に耳を傾けていた。 それが嬉しくて、栄太郎は周りに見えない笑みを浮かばせ、話を続けた。 「高杉さんはそういう常識の壁を破って、他人とは違う新しいことをやってのける人だろう」 「―――という意味を込めて“暴れ牛”にしたんですよ」 .
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