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「別に贔屓じゃないですよ。僕としては的確に四人を評価してると思うんだけどな」
栄太郎は不満そうに口をへの字に曲げて言った。
「どこがだ……」
「まぁまぁ晋作。この暴れ牛はただ暴れてるだけではなく、ちゃんと意味があるんですよ」
松陰が宥め、栄太郎も晋作に説明するように絵の暴れ牛を指差して話し始める。
「そうですよ。ほら、高杉さんのこの暴れ牛は鼻輪がついてないでしょう?」
「そういえば…」
横にいた喜助が顔覗かせて絵を眺める。それにつられて、他にも数人近寄ってきた。
「これは誰にも縛られず、形にはまったことをしない、出来ない人ということ。常識はずれで他人と同じことはしないという意味」
自分が先生になったように語り始める栄太郎。
「他人と同じことをしても面白くないし、何より個性がない」
暴れ牛の絵に指を差しながら晋作へと視線をやると、真剣に栄太郎の話に耳を傾けていた。
それが嬉しくて、栄太郎は周りに見えない笑みを浮かばせ、話を続けた。
「高杉さんはそういう常識の壁を破って、他人とは違う新しいことをやってのける人だろう」
「―――という意味を込めて“暴れ牛”にしたんですよ」
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