第四章 栄太郎の絵

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「へぇ~この牛にはそういう意味があったんだ…。じゃあ義助のお坊さんと、杉蔵の木刀は?」 目をきらきらと輝かせて押し寄せる喜助に、栄太郎は近すぎるから離れてと制する。 今度は暴れ牛の隣に描いてある、裃を着た坊主を指差す。 「裃はもともと官位のある武士の礼装、それを堂々と身につける坊主、久坂さんは肝が大きいと言う意味さ」 そうして次は坊主の横にある木刀へ指を移動させた。 「入江さんは本当に凄いよ。入塾して間もないのにどんどん才能を伸ばしていってる。将来有望さ。きっと鋭い刃を持つに違いない」 説明されると、無性に恥ずかしくなって杉蔵は照れ笑いをした。 「…だけど、今はまだ刃を持っていないから木刀ってところ」 「なっ……」 栄太郎にかつがれたと知って杉蔵はずっこけ落ちた。 「残念だったな。まだまだだってよ」 「これから先も伸びるってことだよ杉蔵」 晋作が落ちた杉蔵をからかい、喜助が励ます。 その様子は飴と鞭というのか、喜助の励ましが杉蔵の目が潤ませた。 「喜助ぇ……」 「ちょ…泣くほどのことじゃないでしょ…」 杉蔵を落ち着かせるため肩をさすってやる。 .
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