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夕日の届かない廊下は薄暗く、ひんやりとしていた。
涼しいというより、寒い。
ああ、冬の空気だ、と思った。
ついこの間、やっと涼しくなってきたと思っていたのに、秋が過ぎるのは早いものだ。
「ちょっと寒いね」
数歩先を行く綾乃の背中に話しかける。
返事は、ない。
小さくため息をついて、綾乃との距離を詰め、右手をそっと握った。
ぴくりと綾乃の肩がはねる。
――わかりやすいなあ……。
「ごめんね、綾乃」
そう言って、ぎゅっと手に力を込めると、はた目にもわかるほど綾乃の頬が赤く染まった。
「だから、別にいいって」
「うん、でも、ごめん」
沈黙。
でもこの沈黙は、先程のような居心地の悪いものじゃない。
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