神山 日出子の場合①

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夕日の届かない廊下は薄暗く、ひんやりとしていた。 涼しいというより、寒い。 ああ、冬の空気だ、と思った。 ついこの間、やっと涼しくなってきたと思っていたのに、秋が過ぎるのは早いものだ。 「ちょっと寒いね」 数歩先を行く綾乃の背中に話しかける。 返事は、ない。 小さくため息をついて、綾乃との距離を詰め、右手をそっと握った。 ぴくりと綾乃の肩がはねる。 ――わかりやすいなあ……。 「ごめんね、綾乃」 そう言って、ぎゅっと手に力を込めると、はた目にもわかるほど綾乃の頬が赤く染まった。 「だから、別にいいって」 「うん、でも、ごめん」 沈黙。 でもこの沈黙は、先程のような居心地の悪いものじゃない。
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