34人が本棚に入れています
本棚に追加
剥がされてしまった手をぶらぶらとさせながら、私は彼女に話しかけた。
「ねえ、綾乃。もうすぐ春だねえ」
「はあ? まだ冬にもなってないじゃん」
「いやいや。今月もあと少しで終わりでしょー? そしたら、11月、12月、冬休み挟んで1月、2月、3月!で、あっという間に春だよ。新学期だよ」
「まだまだ遠いって。半年あるよ」
笑い混じりに、綾乃が呆れた声を出す。
よかった。機嫌はもうすっかり直ったようだ。
「ね、綾乃。来年も同じクラスになれるといいね」
腕を絡め、無邪気を装って綾乃に笑いかける。
先ほどよりも密着した行為。
しかし、私の動作はよほど自然だったのか、彼女は頬を赤く染めるだけで拒絶はしなかった。
黙ってしまう彼女は、素直じゃなくて可愛いと思う。
本当は嬉しいくせに、と私は内心意地悪く笑った。
最初のコメントを投稿しよう!