神山 日出子の場合①

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校舎から出ると、夕焼けが目に痛いほど真っ赤だった。 その美しさにしばし、見惚れていると、 「あ、日出子先輩」 「え」 突然声をかけられた。 振り向くと、体操着の少女がこちらを見ていた。 今まで走っていたのか、少し息が上がっている。 私と同じショートカットの黒髪が、汗ばんだ頬にぴたりと張り付いた様子が少し艶っぽい。 彼女の名前は知っている。 細川 のぞみ。 私はのぞみちゃん、と呼んでいる。 一つ年下の、中学三年生だ。 私と同じ髪型をしていて、よく似た背格好である彼女とは、少し前までは、双子に見られることがしばしばあった。とはいっても、顔立ちは全然違うのだが。 切れ長の瞳とすらっとした鼻筋をもつ彼女は、私よりもずっと大人っぽい。 可愛いというよりも、綺麗という誉め言葉が似合う美人である。 彼女とは、まあ、その……色々あって、交流が途絶えていた。 「久しぶりだね」 「あ、お久しぶり……です」 声をかけた本人は、しまった、という顔をしている。 どうやら反射的に声をかけてしまったらしい。 気まずい沈黙が数秒流れる。 彼女が一瞬だけ、私たちの組んだ腕を睨み付けた。 ――しまった。誤解したかな。 内心舌打ちをしつつも、私は彼女に笑いかけた。 「部活? 終わったの?」 「ええ、まあ」 のぞみちゃんが、視線を彷徨わせながら返事をした。 無意識なのか、体操服の端をぎゅっと掴んでいる。 困惑を隠せない不器用さが可愛らしい。
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