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この学校には、校庭というものがない。
住宅街にあるという点を考慮して、そうなっているのだろう。
代わりに、片道徒歩20分の場所にある土手の一部を土地として持っていて、運動部や体育の授業の時は、そこをグラウンドとして使っている。
「部活お疲れ様。えっと……サッカー部だったっけ?」
「ソフトボール部、です」
――あ、失敗。
のぞみちゃんが顔を歪めたのを見てそう思った。
……ああ、そうだ。サッカー部なのはのぞみちゃんじゃなくて、あの子だった。
やっぱり曖昧な記憶は失言を招くなあ、と私は苦く笑った。
「すみません。失礼します」
のぞみちゃんは一言だけそう言って、私からの返答を待たずに校舎に入っていった。
すれ違い様に見た顔は、今にも泣きそうだった。
ずきん、と胸が痛む。
傷つけてしまったという罪悪感と、今すぐ追いかけて抱きしめたいという衝動。
その衝動のままに動き出そうとした体を、理性が止める。お前にそんな資格はないのだと。
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