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「式、始まっちゃうよ?」
小首を傾げて私にそう言ってから、彼女は母に顔を向け、こんにちは、と挨拶した。
母も戸惑いながら、しかしにこやかに挨拶を返す。
「こんにちは。あなたも、新入生よね?」
「はい、そうです」
「ご両親は?」
「父と母は、今日、都合悪くて……私一人なんです」
「まあ、偉いわねえ」
「そんなことないですよ」
彼女は母の言葉に曖昧に笑ってから、会話に置いてきぼりの私にぱっと顔を向けた。
再びどきっとする。
――やだ、私、どうしちゃったの。
戸惑う私に、彼女は微笑みかけた。
「ねえ、名前、教えて」
「え」
「私は神山 日出子っていうの。神様の山に日が出る子供……で、神山 日出子」
「……なんか、神々しい名前だね……」
「うん、よく言われる」
おかしそうに、日出子は笑った。その笑顔に引きずられて、気づけば私も微笑んでいた。
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