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水帝「どうかしたの?」
ライズ「水帝、他に硬貨はない?」
水帝「ないわ。だってこれ一枚あれば事足りるでしょ?」
ライズ「水帝。僕にはあの店の店主がお釣に金貨を出せるようには見えないんだ」
水帝「それがどうかしたの? 銀貨があるじゃない」
ライズ「仮にお釣が銀貨だったとして、十万枚の硬貨を一体どうやって持ち歩くんだい?」
水帝「……あ」
ライズ「というか水帝。その服買った時お金はどうしたの?」
水帝「……あの格好だったから店主は私が水帝だと分かったみたい。それで金貨をお代に出そうとしたのだけど、また今度で良いと断られたわ。けど、そういう事だったのね……」
ライズ(ひょっとして、水帝って世間に疎いのかな……?)
と、水帝の表情が雲っていってしまう。
ライズ「えっと、水帝。僕この街の広場とか見てみたいんだ。もっと人の居る所で、みんながどんな生活をしているのか見たい。それに、それだったらお金も必要無いだろうし」
水帝「そうね。ならまず街の中心に行きましょ」
ライズ「それと」
水帝「なに?」
ライズ「水帝じゃ、君の名前を呼べない。なんて呼んだら良いかな?」
水帝「そういえばそうね。えっと……」
と、顔を若干赤らめながら水帝は告げた。
水帝「なら、エレオノールって呼んでもらってもいい?」
ライズ「うん。分かったよエレオノール」
名を呼ぶと水帝が頬を赤くする。しかしそれを隠すように改まると、「こっちよ」と広場へ向かって歩き出した。
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