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(もう、早く放課後にならないかな) 嫌々といった表情で数学を教えると約束をした未空だったが、内心はとても楽しみにしているのだ。 しかし、そんな本音を素直に言ったことは一度もない。むしろいつも思っていることと正反対の事を言ってしまい後悔するのだ。 「ではこの問題を…」 (うん、今年から素直になろう…) 未空の目標は毎年同じである。 (そうすればきっと恋人だって出来る筈っ!) 「秋田!!」 「はいっ!?」 「何ぼやーっとしてる!」 「?……え?」 「この地図記号は何か、と訊いている。答えろ」 「あ、はい……えっと…」 (…なにこれ!?う、どうしよう…。地理の野口って厳しいんだよね…ああ単位が…) 『果樹園』 (ほ?え、…か) 「……果樹、園?」 「正解だ。中学生レベルだぞ、次からはもう少し早く答えろよ?」 「…はい」 「ねぇ、さっきのって、君が教えてくれたの?」 そう未空が尋ねた人物は後ろの席の中村菜奈だった。クラスでは目立たない方だが、テストは学年トップで成績優秀。赤い眼鏡が似合うベリーショートの女の子である。 「うん、ごめん。迷惑だったかな?」 「ううん!そんなことない!寧ろ助かったよ。ありがとね」「そうか、それは良かったよ」 「あ、これからもよろしくお願いしたい、な…」 「あはは、いいよ。ピンチな時は助けてあげるよ、未空ちゃん」 「わー!ありがと…!!助かるー」 「どういたしまして」 (今まで話したことなかったけど、いいお友達になれそうだなぁ) 「みーくー!!」 「ひ、っ…!だから揉むなっつーのこのバカ!アホ!」 「よく果樹園わかったじゃんよ。苦手じゃないの?」 「ああ、菜奈ちゃんが小声で教えてくれたから」 「菜奈、でいいよ、未空ちゃん」 「あ、じゃあ私のことも未空でいいよー」 「わかった、未空」 「……ぶぅー、あたしの事忘れてねぇか?」 結城が拗ねたちょうどその時、授業の始まりのチャイムが鳴り響いた。
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