一章 疲れるの…

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一番、信用してはいけない奴なんだ。 今までだって何度も気まぐれに連絡が来た。 もう随分昔の様な気がするが、突然黙っていなくなった奴から、四年近く経ってからこれもまた突然に電話がきた。 『会いたい』と奴は気軽に言った。 会いたくなんかなかったのに、会いたくなんかなかった筈なのに、私はどこかで奴に期待していたんだ。 奴が私の初恋だったんだろう。 その時に、初めてそう思った。 小学生の餓鬼には、二つ年上の奴は大きくて格好よく見えたんだろう。 ただ、それだけ。 電話で冗談混じりに打ち明けた後だったから、どうしても会いたくなくて、どんな顔で会えばいいのかわからなかった。 用事が出来たからと言ってごまかしたけど、少しだけでいいと言われて渋々家を出た。 用事は本当だった。 久しぶりに乗った自転車のペダルは嫌に重くて、それでも会いたくないと言う口とは裏腹に私の足はずんずん自転車をこいだ。 自分でも驚く程のスピードだったけど、夏休みだったせいか不規則な食生活がたたって、貧血で動けなくもなった。
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