デビュー

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荷物は鞄にひとつだけ、下着と着替え。   あとは少しずつ買い揃えたらいい。   まずは仕事を見つけなきゃ。   求人広告を見つけて片っ端から面接に行くけどアタシが想像してたのとはまるで違う。   給料は安いし派遣みたいな日雇いばかり。   その日暮らしなんてしたくないし。   ドラマを夢見たアタシはかなり落ち込んだ。     うなだれながらベンチに座ってるとスーツ姿の怪しい30前後の男が話かけてきた。   「家出してきたの?」   ヤバイ… どこかに売り飛ばされる。   「怪しい者じゃないよ。」  そう言うと男は何やら名刺を出した。   名刺には『club“夜蝶” オーナー 椎名和明』と書いてあった。   「まだ仕事が見つかってないなら、うちで働かないか?」   クラブって言ったらアタシの大嫌いなお水。   「お水は無理です。」   アタシは男の顔を睨んで言った。   「ハハハ、相当嫌いみたいだなぁ。 でもうちの店は君が思ってるようなお水じゃないよ。この街で1・2争う高級クラブだ。 君なら1年で女王になれるよ。」     何言ってんの?この男!   「気が向いたらここに連絡して。それじゃあ。」
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