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あたしは一度だけ強く目を瞑ると、しっかり焦点を合わせて再び原田さんに向き合った。
なにを決めたの?
声には出さず空気でそう訴える。すると原田さんはてんちゃんにだけ見せる特別な笑顔を作った。
「あたし、霧島先輩の代わりになります」
「……」
あたしの……代わり?
散々人の存在を否定しておいてあたしの代わりになりたい。それは随分と都合の良いお話で……
そう思いながら眉間に浅いシワを彫っていると、突然原田さんは小走りであたしの横を通り抜けた。
「てんちゃん先輩っ」
「!」
原田さんのたった一人にしか発しない甘えた声。特別な呼び方。その全てにあたしの体は身震いすると、冷えた汗が固まって縛られたかのように、肌がピンと引きつった。
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