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「……もういい……」
「……え?」
静寂の中でも拾うのがやっとの大きさの声に、てんちゃんは思わず聞き返す。すると本棚の一部から光が抜けて、ドサドサと床に衝撃が走った。それが八つ当たりで落とされた本だと分かると、原田さんは図書室ということなどお構いなしに叫ぶ。
「……もういいです っ!!」
本当はいいなんて思っているはずもなく、あってないような捨て台詞を吐き捨てるのは最後の意地なんだろう。パタパタと走り去る足音はどこか泣いているようで、それでも教室から廊下へと消えていった。
「……」
……終わった、の……?
嵐が去った図書室はいつもの平穏を取り戻し、脱力していたあたしの体は程よく疲れが抜けていた。本棚の向こうでは身を屈めて本を拾うてんちゃんの姿が隙間の影から分かり、全てを集め終わるとふうっと一息ついた。
あんなに怒鳴られ、攻められればてんちゃんも疲れるに決まってる。
あたしに出来るのは心配することだけで、目の前には出られない。ここにはいない人間なのだから……
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