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え?え??……えっ?
なにこれ……一体どういう……ええ……っ!?
説明のつかない事態に鼓動がまた早鐘を打ち始めると、大股で近付いてきたてんちゃんは至極当たり前のようにあたしの隣に腰を下ろし、胡座をかいた。
「はい、これ。朝子に渡そうと思って」
「……?」
てんちゃんは小脇に抱えていたものを、あたしの膝にそっと置く。それはまさしく昨日話題に出た本だった。
「あ……」
約束……ちゃんと守ってくれたんだ……
「あ……りがとう……」
どうにか絞り出したお礼は動揺で掠れる。あくまでも普通のてんちゃんは脚を崩し、後ろに付いた腕で体を支えた。天を仰ぐように顔だけ天井に向けたポーズはまるで家でくつろいでいるみたい。
「オレ、こんなとこに座ったの初めてかも」
「……」
あたしも床に座るのなんて初めてだよ……
肌に触れるひんやりとした木と、本と、てんちゃんと……心安らぐ優しい空間にだんだんと落ち着きが戻ってくる。
少し分厚い表紙をパラリと捲ると、ところどころに古い本ならではのくすんだシミ。あたしはそれを指でなぞって恐る恐る口を開いた。
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