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「ところで、そろそろ勝負が始まるみたいだぜ?見てみようぜ」
俺と葵は、観客席からこれから戦うのだろうメンバーの顔を確認する。
……見たことのない奴らばっかりだ。
……ん?
あの紫色の長い髪の女子……携帯を片手に持ってるな。
科学魔術師って所か。
……あれ?
「そういえば、高一の時に知り合った奴だったな」
「あいつって?」
「あの紫色の長髪の女子だよ」
名前は確か……一之瀬春香だったか?
確か、変な奴らに絡まれてる所を助けたことがあったな……ま、今は置いておこう。
「どんな戦い方するんだろう、あいつ……」
「……またなんだね、瞬一」
またって何のことだよ……葵。
最も、この場合には何のことかを聞かない方がいいというのを、知っている。
なぜなら、その後がややこしくなるからだ。
「えっと、他の相手は……と」
他の三人の姿を見る。
しかし、その三人はまったく知らない人物だった。
戦闘場に立っている人間は、一之瀬を含む女子が二人に、男子が二人か。
何というか……見事にバランスの取れた編成だこと。
「お?始まるみたいだぜ」
「ああ……って、いつの間に戻ってきてたのか、晴信」
ふと横を見ると、何故か平然とした様子で座っている晴信。
「あれ?晴信、戻ってきたんだ」
「まあな。最後の戦いくらい見ないとな」
確かにもったいない気がするな。
俺も今さっき戻ってきたばかりだけどな。
「むぅ……」
「悪かったな。二人きりの所を邪魔したりして」
「そ、そんなんじゃないってば!」
顔を赤くして、葵は両手をブンブンと振って否定する。
……何というか、葵ってつくづく、
「可愛い、か?」
「え?」
晴信から発せられたそんな一言。
それを聞いた葵は、
「え?本当?」
「う……」
上目遣いに、そんなことを尋ねてくる。
……これ、本当に意識しないでやってるんだよな?
だったら、
「……ああ、可愛いとは思うぜ」
とりあえずそう言っておく。
「ありがと♪瞬一」
笑顔で俺に抱きついてくる。
と、同時に。
更に視線は強くなっていた。
……って、よく見たら闘技場の方から俺のこと睨んでんじゃねえか!
戦いに集中しろっての!!
『それでは位置につけ!』
校長の声が闘技場中に響く。
そして訪れる、静寂の時間。
『はじめ!!』
同時に、四人は動き出した。
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