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路地裏の一角。
女子の立ち位置から、逃げる道はない。
見たところ、日本人ではない。
周りには黒服の男達。
一般人ではない……ていうか、殺し屋?
魔術使う殺し屋?
「……ないない。絶対ない」
さすがの俺も、こんな場面に遭遇するのは初めてだった。
て言うか、絶対こんな経験出来るはずないだろ!
……今俺がしてるけど。
「……これ、俺、助けるべき?」
聞くまでもない。
困っている人がいたら助ける=人間の常識?
……けど、これに関わったら死亡フラグ立ちそうなんだけど……。
「……けど、やるしかねぇ」
俺は決心すると、その黒服達の所まで歩みを進めた。
そして、言った。
「ちょっと待て!」
「!?」
黒服達の視線が、一気に俺の方に集まる。
……無機質な顔をしてやがる。
女子の顔まで見せてくれないか……。
金色で長髪ってことしか分からないや。
「こんな路地裏で女の子一人を大の大人が取り囲んで、恥ずかしいとは思わないのか?」
「……」
黒服は、先ほどからずっと黙り込んだまま。
というか、俺と会話をしようとしない。
……何なんだよ、こいつら。
まるで、感情なんで捨ててしまったような……。
「……!」
「な、何!?」
黒服の一人が、右手に炎の弾を作り出す。
こいつ、魔術師か!?
そしてそれを、俺の方に撃ってきた!!
「くっ!……あらゆる害より身を守る不可視の壁よ、我を守れ!!」
間に合うか……!?
*
ドン!という何かと衝突したような音が生じた。
黒服と金髪の女子、そして瞬一の間には、土煙が舞っている。
攻撃した黒服は、自分が獲物を仕留められたかを確認するまで、警戒を解いてはいなかった。
「……ふぅ。間に合った」
「!?」
瞬一の簡易結界は、間一髪の所で攻撃から身を守ったのだ。
「……」
ダッ!と足音を揃えて、黒服達は瞬一めがけて駆けてきた。
瞬一はその間に、自分の相手の人数を数える。
人数は三人。
ギリギリ一人でも勝てそうな人数だった。
「ここで戦うなら、武器を取り出した方がいいか……」
呟く瞬一を尻目に、
「……」
男達の手には、それぞれの属性を帯びた、刀みたいな武器が握られていた。
「なるほど……それが御所望かい?なら……力を宿す雷の剣よ。その姿を具現して我が武器となせ」
瞬一は、何かの詠唱をする。
瞬間。
その右手には、雷を帯びた刀らしきものが握られていた。
「サンダーソードの餌食になるがいい!!」
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