フワフワールド その1

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もし、僕に突っ込みの才能があったら 「それは、こっちの台詞やっちゅーねん!」 …などと、警戒を軽快に押しつぶしたツッコミで、その場の空気を少しでも柔らかく出来たものの、ごあいにく様、僕にそんな都合のよい才能など無かった。 僕は脳内会議を開く事にした。 議題はひとつ、来壊彩夏は、一体全体なぜ“浮いている”のか、電光石火の如く出た答えもひとつだった。 それは、おそらく来壊彩夏と言う人間は、この世に存在しない物体なのだと言う結論だ。 最近読んだ漫画に、猿っぽい名前の主人公が“舞空術”と言うもの使っていた事を思い出したからだ。 理由はこうだ、来壊彩夏と言う物体は、その漫画に登場人物になるはずだったのだけれども、大人の都合上、もしくは作者の気まぐれで、最後まで日の目を浴びる事がなく、放置プレイをかまされた結果、悲傷からくる無念の思いが、沈殿、推敲、凝固され、そこに神的立場の者の勧誘により、魂を与えられ、二次元から三次元へと召喚された、いばわ現実であって現実ではない、言うなれば、都市伝説的位置づけなモノなのだろうと、僕は完結したからだ。 車も宙に浮かないこのご時勢、女子高生が浮くなど、馬鹿げた話はない。 きっとそうだ、これは都市伝説なんだ。 こんなぶっ飛んだ結論を叩き出した自分の脳が病み始めているのかなんて思わない。むしろ、いつもより100倍は正常で、尚かつこのまま模索していると、結果的にノーベル賞でもとれそうな、そんな清清しい気さえもした。だって、普通に考えて、目の前で人間が浮いている、無理やりな現実に、無理やりにでも、理由をつけない限り、僕の気が治まらなかったのだ。
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