side:A 序章

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やがて男が部屋に入ってくる、真っ直ぐとベッドに向かってくるのが良く分かった。 ちょうどベッドの真横に立ったときに、被っていた布団を男に覆い被せるように投げた。 机の上にあるカッターに手を伸ばして、手に取るのと同時に刃をスライドさせる。 布団が邪魔で上手く身動きが取れない男と距離をとりつつ、カッターを構えた。 あぁ、ダメだ、頭が真っ白になる、何で私はこの男と対峙しようとしてるのか?さっさと海里を連れて逃げてしまえばいい、警察に電話すればいい。 だけど、それが出来ない、海里を守るという使命感が、この男と戦うという選択肢しか選べないようにする。 ダメなんだよ、本当は、逃げないと、逃げないと殺される、父と母のように殺される。 体をズタズタになるまで切り裂かれる、きっと痛い凄く痛い。 嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない、死にたくない、生きたい、痛いのは嫌だ。 怖い……怖いよぅ……。 布団をどけて男が包丁をこちらに向ける、光が反射してキラリと光った。 私は男に飛びかかった、もちろん手にはカッターを持っている。 何とも言えない弾力が私の手に伝わる、そのご弾力性がなくなって柔らかいものに突き刺さった。 分からない、私が何をしているのか、今何が起こっているのか、分からない。 next→
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