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「じゃ、蝋燭の火消して」
「うん」
元気よく返事をした海里に対して、私はただ黙って頷いた。
そしてゆらゆら揺れる、蝋燭の火に息を吹きかけた。
フッと火が消えて母と父はパチパチと拍手をする。
「おめでとう」
「おめでとう」
何がめでたいのか分からない、両親だって分かっているはずだ。
年を重ねることは死に近づくこと。
それがめでたいのか。
めでたいわけが無いだろう。
「そういえば愛里はまだプレゼント、決まってなかったわよね?」
母が思い出したように切り出した、海里はぬいぐるみを頼んでいた気がする。
私は特に何も欲しい物が無かったので、まだ言っていなかった。
「別に……ないよ」
「そんなことないだろ、なんでも良いんだぞ?」
「ぬいぐるみ?新しいゲーム?」
いらない、そんな物いらない。
私がほしいのはもっと違うもの、もっとすごい物。
「来年も……再来年も、ずっと……ずっとみんないっしょに、たんじょうびを祝えたら……それでいいよ」
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