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絡めた小指に父と母の暖かさが残る。
少し信じてみようと思った、この約束を。
「ねぇケーキたーべーたーいー」
さすがに我慢の限界なのか海里が足をバタバタさせてうめいた。
「はいはい」
呆れた様に母はケーキを切り分けて、海里の前にそれを置いた。
「いただきますっ」
言い終わるのとほぼ同時にケーキをフォークでさしてかぶりついた。
私はスプーンで上の方からすくって食べる。
そんな私たちを微笑ましく見守る父と母。
私は幸せだった、悪態をつきながらも、家族で過ごせることに幸福を感じていた。
これからも続くと思っている、この幸福が……少なくても10年、15年続くと思っていた。
「ごちそーさま」
「ごちそうさまでした」
生クリームで汚れた海里の皿と少しのスポンジのかすが残る私の皿。
双子の私たち、似てない双子。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
父と母も食べ終わり母はケーキの皿を片付けに台所へ向かう、父は海里を連れてお風呂へ向かった。
「愛里、次お母さんと入る?」
「いい年して、親と入りたくないよ」
「良いじゃない今日は誕生日なんだから、特別な日よ」
母が洗った皿を受け取り丁寧に拭いていく、母はうふふとほがらかに笑った。
「……今日だけだよ」
私は母のこの笑顔に弱い、私の心をカンタンにほぐして軟らかくして、何でも許したくなる。
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