全ての序

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   ここに、ある一粒がある。  人が手の親指と人指し指でつまめる程度の大きさだ。  たが、これを人は絶対につまむことはできない。一つの理由として、先ずこの一粒はとてつもなく重いのだ。そしてなにより、この一粒が粒として形を成しているということは、それをつまもうとする人間はおろか、動物や植物などのあらゆる生命、砂や岩石などの無機物質に至るまで、この一粒がある空間には存在しないからだ。  この一粒の周囲は、真空で真っ暗闇でとても静かだ。黒しかない。黒と言っても色々あるが、この一粒を包む黒は現在の地球上のどこにもない本物の黒だ。  また、この一粒は、測り知れない爆発のエネルギーを内包している。火薬をたくさん詰め込んだ爆弾のようなものだ。ただ、爆弾とは違って、いかなる者もこの威力を計測することはできないし、炸裂の瞬間を目にすることもできない。  この一粒の成り立ちは長かった。気の遠くなるような時間をかけて、ある宇宙中のありとあらゆる原子が一箇所に凝縮してできたのが、この一粒だ。  凝縮はし尽した。ふるふると震えている。  
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