新星

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   青年は、老人に別れの会釈を済ますと、真っ直ぐ玄関へと向かった。その後ろ姿は、心地よい緊張が溢れ出ているのが見て取れ、揺るぎない闘志でみなぎっていた。その姿を老人は例の顔をほころばせる様に見守っていた。  青年は扉を開いて外へ出た。いきなり多くの喚声があがった。この青年が住む小さな島の村人全員が、幼い頃からこの地で慣れ親しんだ青年の晴れの門出を祝い、激励するため集まってくれたのだった。子供達は青年にまとわりつき、大人達は食料や路銀にと餞別を持ち切れないだけ渡した。  青年は、幸福な気持ちになりながらも気を引き締め、優しい村人達と師たる老人に見送られながら、村を後にした。  季節は初夏。穏やかな気候がこの大地を覆っていた。大会当日もこのままでいけば、好天に恵まれることだろう。  先人達が掘削したと言われる距離の長い海の下を通る隧道を抜ければ、本土の大陸に出られる。隧道を出で西の方角を臨めば、台地の上に建つ王城と天高くそびえる塔が見える。その場所こそこの青年にとっての目的地であった。  青年は、3日をかけ無事大陸へと渡った。  
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