第一章 音楽室の女神様

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(さて…帰って志賀直哉全集でも読むかな) そう思って鞄を取ったのは兼好であり…。 (あ、おいっ!!それ俺の鞄…) と、間違って持っていかれている自分の鞄を見ている業平。 気づかず教室を出ていく兼好を、つい言いそびれた業平が、兼好の鞄を持って追いかける。 (ってか何て言葉かけりゃいいんだろ…『あのさ』ぐらいがいいかな…それとも『よぉ』とか軽い感じて…まてよ…あいつ確か頭いいから『ちょっと君』とかがいいかな…) まったくどうでもいいところで考える業平。 (あ、そういえば先生になんか呼ばれてたな…) 思い出した兼好は靴を取り出そうとして下駄箱へ戻し、再び校内に入ろうとして後ろにいた業平に気づく。 (あ、こいつ俺の隣になった業平だっけ?何もじもじしてんだ?) (あ、やば、何て話しかけようかまだ決まってねぇや) (まったく、どうせなら隣に小野小町並みに可愛い子がくりゃよかったのに…ってか邪魔だな…ん?何こっちじーっと見てんだ) (目を見ろ…見れば何がいいかわかるかもしれん) (こいつ気持ち悪…まさか…いやいや、世間一般でBが流行ってるとはいえ、こんなところで…) (よし、もう何でもいいや) 意を決した業平は鞄を指差しながら話しかけた。 「あのさ、君のそれ…」 「え!?」 しかし、鞄のある位置が悪かったのか小さな誤解が生じる。 (こいつ何指差しやがった!?怖くてその指の先が見れない…だが確かに俺の下半身のある部分に…) 「なぁ?いいだろ!?」 業平は気づいてくれるだろうと思い、色々省いた。 よって小さな誤解は激しさを増す。 .
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