8人が本棚に入れています
本棚に追加
(さて…帰って志賀直哉全集でも読むかな)
そう思って鞄を取ったのは兼好であり…。
(あ、おいっ!!それ俺の鞄…)
と、間違って持っていかれている自分の鞄を見ている業平。
気づかず教室を出ていく兼好を、つい言いそびれた業平が、兼好の鞄を持って追いかける。
(ってか何て言葉かけりゃいいんだろ…『あのさ』ぐらいがいいかな…それとも『よぉ』とか軽い感じて…まてよ…あいつ確か頭いいから『ちょっと君』とかがいいかな…)
まったくどうでもいいところで考える業平。
(あ、そういえば先生になんか呼ばれてたな…)
思い出した兼好は靴を取り出そうとして下駄箱へ戻し、再び校内に入ろうとして後ろにいた業平に気づく。
(あ、こいつ俺の隣になった業平だっけ?何もじもじしてんだ?)
(あ、やば、何て話しかけようかまだ決まってねぇや)
(まったく、どうせなら隣に小野小町並みに可愛い子がくりゃよかったのに…ってか邪魔だな…ん?何こっちじーっと見てんだ)
(目を見ろ…見れば何がいいかわかるかもしれん)
(こいつ気持ち悪…まさか…いやいや、世間一般でBが流行ってるとはいえ、こんなところで…)
(よし、もう何でもいいや)
意を決した業平は鞄を指差しながら話しかけた。
「あのさ、君のそれ…」
「え!?」
しかし、鞄のある位置が悪かったのか小さな誤解が生じる。
(こいつ何指差しやがった!?怖くてその指の先が見れない…だが確かに俺の下半身のある部分に…)
「なぁ?いいだろ!?」
業平は気づいてくれるだろうと思い、色々省いた。
よって小さな誤解は激しさを増す。
.
最初のコメントを投稿しよう!