第一章 音楽室の女神様

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「い、いいわけないだろ!!」 「何でだよ。俺のだろ!?」 「はぁ!?馬鹿やろう!!お前には必要ない!!」 「はぁ?まぁ…でも一応勉強してるわけで…」 (勉強だと!?いったいどこでやったんだ!?いや、落ち着け、とりあえず今俺はとても危ない奴に絡まれてる) 実際はただ鞄を間違い、間違われただけの二人である。 (何で返してくれないんだろ…しかもなんか凄く警戒されてるし…あぁ、確かに知らない奴だと警戒されるよな。よし、まず警戒をとかせよう) 「いや、怪しい奴じゃないんだよ。さぁ力を抜いて、リラックスリラックス」 二人の誤解は凄まじいことになっていた。 (ほ、ほられる!!) 身の危険を感じた兼好は全力で駆け出した。 それはもう上履きを履かずに駆け出すほど猛然と駆け出した。 「え!?や、ちょ、待てぇ!!」 業平は本能的に追いかけた。 野性的な馬鹿さを持つ業平にとって、逃げるものは追う対象なのだった。 (止まったら喰われる。止まったら喰われるぅ~!!) (何で俺追いかけてんだろ…まぁいいや、とりあえず鞄返してもらわないといけないし) 誤解の解けぬまま、この奇妙な追い掛けっこは続いていた。 一人は恐怖の、もう一人には疑問の追い掛けっこである。 (はぁはぁ、ダメだ。文化系の俺ではもう限界だ。どこか…とりあえずこの教室に飛び込め!!) そして誰かいることを願いながら兼好は角を曲がって正面の教室に飛び込んだ。 (ん?あいつ音楽室に何か用なのか?まぁいい…とりあえず鞄返してもらわねぇと) そして追い掛けていた業平もその教室に入っていく、普段は放課後の寂れた音楽室も、今日は何故か騒がしく、愉快な雰囲気が流れていた。 .
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