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「はーやーくー!!照井竜、
もう夕方だ。」
「そう焦らなくても祭は逃げんぞ…。」
「そだ、皆で浴衣着てこうよ!!
お揃いいーじゃないっ」
亜樹子はいつ用意したのか、
俺と照井、そして自分の分の
浴衣を取り出した。
「んー…竜くんはこれねっ」
「あ、ああ…」
そう言って照井には古風な柄の
黒い浴衣を渡した。
帯は赤だ。
「はいっ翔太郎くん」
「おお、サンキュ」
俺には藍色の帯と浴衣。
亜樹子はピンクのかわいらしく
花をあしらった浴衣。
フィリップは水色に金魚。
数分後、
着替え終わった俺達は、
神社の階段を昇っていく。
フィリップは一段、二段、と飛ばして嬉しそうに昇っていく
「…春子そっくりだ。」
「春子?竜くんの妹さん?」
「ああ。」
階段を昇りきり、
社が見えると照井はスッと目を閉じる。
『春子…!!走るな!!』
『お兄ちゃん遅いーっ
わたあめ売り切れたら責任取ってよ!?』
『はいはい…じゃ急ぐぞ』
『いやっほーっ』
「父さん…母さん…春子…」
照井の頬にツゥッ、と一筋、
涙が伝った。
それに気付いた照井は目を開け、涙を拭う。
「フ、フィリップを見失うぞ」
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