参.時越

1/5
前へ
/59ページ
次へ

参.時越

「あぁー……」 目を覚ませば逆さまに映る視界 太陽の光が照らされ、視界に移る大きな木から蝉の泣き声が聞こえる 「階段から落ちたんだ」 否、落とされたが正しい 夏季は腰と後頭部の痛さに目を閉じて、思い出す 石の階段のど真ん中に大の字で寝転ぶ、頭を地面に付けて、である 「はぁ…悪趣味だなぁ」 なんて言いながらも夏季は青い空を見る 同時に風がふわりと吹く 「………きれー…」 青空に白い雲が重なり、木々が風に揺れて地面の日陰も揺れる 「……あれ?」 目の前に移る景色に違和感がある 確か私が倒されたのは壬生寺の大きな石の階段 今見えるのは… 道が途中で消えている… 地面から青空に変わっている よく回りを見れば、自分の倒れているこの石の階段も全然小さく、木々が生い茂る 壬生寺は木はそんなになくって、太陽の光は地面に反射するほど明るかった 目の前に移るその景色はその正反対を移す
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

460人が本棚に入れています
本棚に追加