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『そう』『……え?』冷静な自分に梨華は驚いた顔をした。『もうあたしには関係ないから』
そうきっぱりと言ったあたしに梨華は首を横に何度か振ってあたしの肩を掴んだ。
『ゆず……違うよね?ねぇ、どういう――』
『宮本先生は石井先生が好き。もうそれでいいよ……。どうしたってあたしの気持ちは叶わないし、お付き合い出来るなら、先生にとって幸せなことかもしれない。諦める――ううん、諦めた』
これが自分の気持ちだ、と言い聞かせるためにあたしは力強く言った。
『そんなの違う!宮本は絶対に脅されて――!』
肩を掴む梨華の手に力がこもる。あたしは眉間に皺を寄せた。
【許してちょうだい】
『っ……やめてよ』
『……ゆ、ず?』
『いいの。先生を忘れる為のチャンスなんだから。もう、もう忘れさせて。忘れたいの!』
いいんだ。あたしは先生を忘れる。前に進む。それで良いじゃないか。もうこれ以上、縛られたくない。
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