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ふっと肩が軽くなって、あたしは顔をあげた。梨華が手を放したのだ。そして、梨華は泣いていた。あたしは驚いてハンカチを差し出す。
『ど、どうして――』
どうして梨華が泣くの?これはあたしの問題なのに。
『宮本、絶対にまだゆずが好きだってば……っ』
『それ以上言わないで?それに先生は、他に好きな人いて付き合うような人じゃないよ』
あたしは苦笑いしながら言うと、梨華は唇をかみ締めて、ぶんぶんと首を横に振った。
『違う。違うよ……。そんな綺麗なもので済まされる話じゃないのよ。――お願いだから、宮本に会いに行って?』
あたしもそれはできない、と首を横に振った。
『全部終わったから。あの電話で』
梨華は本当に辛そうに声を震わせて『もう、あたしに出来る事、ない』と言うと、立ち去っていった。
――全て終わり。次に進む。それだけのこと。
自分は、これが素直な気持ちなのかよく分からなくなっていた。素直だ、と思うようにした。
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