本編

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一週間後、スーツの男は刑務所にいた。 といっても、捕まっているわけではない。 看守の控室で、ある書類を見ていた。 書類に書かれていたのはこれから会う男の犯罪記録であった。 放火。家屋全焼。死傷者多数。判決、死刑。 次はこの男か。 スーツの男は呟いた。 その時、扉の開く音が聞こえ、名前を呼ばれた。 振り向くと、看守がそこに立っている。 お待たせしました。 こちらです。 その声を聞き、スーツの男は机に広げた物を片付け始めた。 書類をバッグに入れ、 ボールペンをペンケースにしまった。 そして、写真を胸ポケットに差し込んだ。 荷物を片付け終えた男は、看守に続いて部屋を出た。 飾りけのない廊下を進んだところに、書類の男の独房があった。 男は、目の前に現れたスーツの男を、睨むように見つめた。 スーツの男は、刺すようなその視線を無視して、胸ポケットから写真を出し、男に見せた。 「ここから出たくないか?」
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