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「ねぇ、先生は俺と同じシュミもってるでしょ」
「同じシュミ?」
「そ……男、いけるくちでしょ?」
「…まぁ、いけるな」
やっぱりそうか、と夢海は笑う。
楽しそうに笑い夢海はやがて零の手を握る。
「俺とヤらない?気分いーことしてあげるよ?」
ふふ、と魅惑的に笑う夢海は零をひきつけて離さない。
零は夢海の紅い唇に引き寄せられるように顔を寄せた。
「でも、今はだぁめ……俺、今日は用事あるから」
唇に細い指先が当てられれば零ははっと我に返る。
からかうかのように笑う夢海を軽くにらんで零はため息をつく。
夢海は一歩先に行くと零を振り返る。
その唇には魅惑的な笑みを浮かばせ、そして見たものを捕らえてしまうような瞳を零にむけた。
「またね?」
零が言葉を返す前に夢海はちょうどやってきた車のドアを開けて中に乗り込んでいた。
零が我に返ったときにはすでに夢海の姿はない。
それこそ、夢であったのかと考えるも、ふと感じたポケットの違和感に中を探る。
ポケットの中には甘い香りのする薄桃色のカードが入っていた。
『水曜日の放課後、物理準備室で』
それだけしか書いていないものの、誰がいれたものかはわかっている。
捕らえられたのは零か、捕らえられたのは夢海か。
零はそのカードをポケットに戻しゆっくりとした足取りで自分のマンションにまで戻っていったのであった。
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