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「ねぇ、せんせ?」
赤い唇を三日月の形にして、その悪魔は微笑んだ。
「先生を天国に連れて行ってあげるよ」
それは地獄の間違いだろう。
「せんせい…ねぇ、零」
呼び方を変え、どこかせつなそうに、寂しそうに、そいつは笑った。
「ごめんね?」
なぜ、謝る。
本当に謝らなければいけないのは俺だろう。
「何も、知らなきゃよかった」
俺と、お前は、結ばれることはない。
なぜなら俺たちは、同性で、決して結ばれない、相反する位置に立っていたから。
「零、ごめんね?」
今日もあいつは、嗤いながら、泣きながら、俺を誘惑していく。
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