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物理教師の楸零は腕に実験で使う器具を持ったまま一人ため息をつき歩いていた。
まだ二十代半ばである彼は先ほど女子生徒たちに囲まれてやっとのことで逃げ出してきたばかりなのである。
「女に迫られるよりかわいい男の方が興味あるんだがな」
誰に話しているわけでもないのだがそうつぶやき目的の物理実験室に向かう。
ふと、隣の準備室からかすかな物音がしたのに気づく。
すでに部活は終わり生徒たちはこの校舎内には残っていないはずだ。
では、何者かが侵入したのか。
泥棒でないかと疑った零は実験室に音を立てないように入り込む。
準備室へとつながる扉の方につれて中で「何」をしているのかはっきりしてきた。
「ふぁっ…あ、く…」
零の耳に届いたのはかすかなあえぎ声。
お楽しみの最中かと頭の中で考えるも準備室に腕に抱える器具をしまわなければ帰れない。
恨まれるのを承知の上で零はがちゃっと扉を開いた。
さして広さのない準備室にはたくさんの器具がおかれている。
そしてその中に充満するのはやっている行為を示すような香りであった。
「センパ……も、むりぃっ」
「あぁ…夢海…気持ちいいよ……」
少し高い声の少年と、声変わりの終わった、男の声。
零はタイミングの悪さに悪態をつきたくなった。
扉を開けたままでも、二人の姿は確認できるが、行為に夢中になっている二人からは確認できないだろう。
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