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「あぁ、物理担当の先生だったんだ」
零の顔を見た生徒は納得したようにつぶやいてから、薄明かりの元へ顔を出す。
メイクを施せば、女としても通用するほどの整った顔をしている。
ところが、その瞳には違和感があった。
右目は黒い。
ところが左目は赤く、そして光を灯していない。
零の視線を感じ取ったのか、彼は左目に手を当てて苦笑した。
「コレ、気になるんだ」
「あ、いや……」
「義眼だよ。俺、小さいときに左目を失くしてるの」
さらりとそんなことを言った生徒は脱ぎ散らかした制服のほうへ戻っていく。
シワできちゃったな、という言葉が聞こえる中、零は一人実験で使う道具を片付けに取り掛かっていた。
「先生の名前は?」
「……」
「ちょっと無視はひどいんじゃない?」
「……」
「先生、覗きしていたこと、校長先生に匿名でメールしちゃうよ?」
「どうしてお前が校長のメアドを知っているんだ」
「ふふ、やっとこっちむいた」
生徒の言葉にあきれたように言葉を返した零の視線を受けて生徒は嬉しそうに笑った。
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