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「俺は二年の久那夢海(ヒサナユウ)……物理の授業はとってないから先生とは初対面だね」
「二年なのか…一年だと思った」
「えー、それって俺が童顔ってこと?」
不満そうに問いかけられれば、そうだろうと返事を返す。
夢海は零の言葉が頭に来たのか頬を膨らませる。
その動作が幼い子供のようで零は思わず顔をほころばせる。
「あ、笑ってるし」
「おまえがあまりにも子供みたいだったからな」
道具の残りを片づければ零は夢海を見やる。
すでに着替えたらしい夢海の頬に残る白いものをみれば眉を寄せ、指先でそっと拭う。
指についたそれを、汚れたものでもみるかのように見つめたあと棚におかれていたティッシュ箱のティッシュでふき取る。
「俺まだ先生の名前聞いてないよ?」
「知ってどうする」
「俺だけ知られてるのはずるいだろ?」
零の腕をつかんだ夢海は名前を教えるまで離すつもりはないらしい。
ため息をついた零は夢海のほうを見やる。
「楸零(ヒサギゼロ)だ」
「零だね」
「教師を呼び捨てか」
「当たり前じゃん」
くすくすと笑いながら夢海はうなずく。
そのまま扉の方へと歩みを進める。
むろん零の腕はつかまれたままだ。
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