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そこは、知らない世界だった。
ここは何処なんだろう。
窓の外に伸びる石畳の道や木造の家屋が立ち並ぶ光景は、間違いなく日本のものではない。
かといって外国のものかと聞かれると、それもまた少し違う気がする。
極めつけとして、ここから少し離れたところには、巨大な塔の周りに別の塔を更に二、三本ぶっ刺したような、ケルン大聖堂ばりの建物がそびえ立っていた。
ここは何処なのか、なぜここにいるのか、そんな疑問は言い出したらキリがない。
ただなんとなくわかることは、今ここにいるのが夢などではなく、現実であるということだけだった。
いまいち状況が整理できないまましばし呆然としていると、窓とは反対の方向で扉の開く音がした。
驚き、振り向く。
「あっ、やっと起きたみたいね」
扉の向こうから現れた人を見て、また驚いた。
見たことのない髪の色。
見たことのない目の色。
そして何より……扉の前に立つ少女は、美しかった。
「ねぇ、寝起きのところ悪いんだけど聞かせて。あなたは……」
やはり夢なのではないかと思い、頬を引っ張りながら美少女の言葉に耳を傾ける。
「その……やっぱりイーズから来た人間なの?」
イーズ。聞き慣れない単語。
そんなわけのわからないことを聞いてくる美少女と、この日出会ってしまった。
思えば、この出会いが非日常の始まりだった。
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