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蹴られた石は斜め上に飛び上がり、放物線を描いて地面へと着地────しなかった。
「なっ……!?」
潤一は思わず言葉を失う。
自分が何気なく蹴り飛ばした石ころは、放物線を描くどころか、ほぼ水平に物凄い勢いで飛び出したのだ。
びゅおんッ! と唸る豪速球(石ころ)は、木々の生い茂る森の中へと吸い込まれていく。
それは一本の木に当たって、跳ね返ってまた別の木に当り、跳ね返って、跳ね返って、そして────
「グギャッ!!」
悲鳴じみた声が聞こえた。
……何かに、当たった。
「ジュン! 何やってるの!?」
その声に気付いたエリスが振り向き、声を上げる。
「えっ、いや……石ころ蹴ったらさ、なんか人に当たっちゃったみたいなんだけど……」
「こんな所に私達以外の人がいるわけないじゃない!
あれは……」
木の陰で蠢く悲鳴の主を見て、エリスの表情が強張る。
そんな彼女のただならぬ様子を察した潤一だったが、
「な、ななな何だってんだ?
なぁ、おい!」
動揺するしかなかった。
そんな潤一の頭上で、マオが呟く。
「まずいことになったですね……」
木の陰で蠢くそれを見据えながらマオが放った次の言葉に、潤一は衝撃を受けずにはいられなかった。
「あれは……、魔物なのです」
異形の影が、大きく揺らめいた──────
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