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「うわぁぁぁあぁあぁぁあ!!」
眼鏡の少年、杉坂京介は空から降ってきた。
……何のことはない、学校からの帰り道に光の球に触れて、気が付けば落っこちていた、と。それだけである。
(まずい、ぶつかる……ッ!)
まぁ、空から落ちていけば自然と地面やら何やらにぶつかってしまうもので……、杉坂は今まさにその場面に直面していた。
杉坂は空中にいるため、衝突は避けられない。
仕方なく腕を前に出し、障害物──積み重ねられた木箱とぶつかった時の衝撃に備え、そして…………、ぶつかった。
「ぐぅっ……!」
ばきばきと容赦なく木箱を破壊し、ドンッ! と地面……らしきものに衝突する杉坂。
不思議と体に痛みは無かった。
何故痛くないかは取り敢えず置いておいて、周囲の様子を確認する。
「えーと……、……何で海?」
……そう、杉坂が落ちてきたのは地上ではない。船の上だ。
それはすなわち海の上。見渡す限りの青色が、眼下には広がっている。
そして更に、杉坂には一つ気になるところがあった。
「っていうか……、木造船舶って今時あり得るのか?」
杉坂の落ちてきた甲板はもちろん木。船首も木、船尾も木。
おまけに背の高いマストまでもが木造りで、そこには白い帆が畳まれている。
今時なかなかお目に掛かれない、立派な木造の帆船だった。
(すごいな……)
杉坂が感心していると、船の中から複数の男の声が聞こえてきた。
どうやら、先程杉坂がぶつかった時の音を聞いて様子を見に来たようだった。
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