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当然だ。
今しがた自分をふった相手が急に触ってきたのだ。彼女じゃなくても驚く。
・・・・・・それでも、私は彼女に触れてみたかった。
なぜかは分からない。
ただ、びっくりしたあと、私の手を握った彼女の顔は、とても、幸せそうだった。
・・・・・・私にはできない笑いかただな、と思った。
私は衝動的に、彼女の唇に、自分のそれを重ねていた。
・・・・・・今度こそ、彼女の思考は停止していたと思う。
ただ触れるだけの、キスとも言えないようなキス。
本当、あのときの私はどうかしてた・・・・・・。
でも、彼女の嬉しさと戸惑いが混ざった表情を見ると、私も幸せになれたような気持ちになった。
私は彼女に微笑みかけると、挨拶をして一人で帰った。
彼女を夕方の教室において。
・・・・・・二ヶ月前のことだ。
彼女の死因は失血死だそうだ。
浴槽でリストカットをしたらしい。
腕に他の傷痕は無く、普段からやっていたわけではないということだった。
・・・・・・死ぬために腕を切った。
そういうことだ。
―――はぁ―――。
死者の前に立つと、その人のことを思い出すと聞いたことがある。
本当なんだなぁ・・・・・・。
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