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「・・・・・・お腹が空いたわ。夕飯を作って」
そう私に言いつけて姉さんはまたソファーに座った。
私はのろのろと立ち上がる。
・・・・・・誰かに何かをされて泣いたのは初めてだ・・・・・・。
まあ、泣いたこと自体が久しぶりだったんだけど・・・・・・。
・・・・・・なんで泣いたりしたんだろう?
私はトントントンと包丁で野菜を切りながら考える。
痛かったからかな・・・・・・。
痛い。
・・・・・・痛い?
痛いって、どんな感じだっけ・・・・・・?
ザクッ―――!
「―――っ!?」
考え事をしながら包丁を使ったせいか、私は指を切ってしまう。
「・・・・・・」
私はどくどくと自分の指から流れだす真っ赤な血を眺める。
今、私はイタイ・・・・・・。
だけど、泣くほどではないと思う。
・・・・・・痛さが足りないのかな・・・・・・。
ちらり、と姉さんを盗み見る。
姉さんはこちらにはまったく気にせずにテレビを見ている。
「・・・・・・」
私は包丁を逆手に握る。
左手をまな板の上に甲を上向きにしてのせる。
そして―――
ドンッ
「―――くっ!」
包丁を突き刺した。
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