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包丁は私の手を完全に貫通して、まな板に突き刺さっていた。
痛みが強くなる。
・・・・・・それでも、まだ足りない。
私は包丁の柄を握り直すと、勢いよく引き抜いた。
「っ―――あぁっ!!」
・・・・・・つい、声が漏れた。
その声に気が付いて姉さんが振り向く。
さっ、と顔が青くなる。
「何をやっているの!?」
姉さんは私の隣に駆け寄ると、心配そうに私の手を見る。
あぁ、姉さんもこんな顔するんだ・・・・・・。
「何を考えているの!?」
姉さんが私の腕を自分の髪をまとめていたゴムで縛りながら、私を呵りつける。
「・・・・・・痛かったら、また泣くのかと思って」
「泣く?」
「さっき私が泣いたのは、きっと痛かったせいだから・・・・・・」
正直に話す。
姉さんははぁ、と溜め息をつくと、私をソファーまで連れていき、そこに座らせた。
「包帯はどこ?」
姉さんは家の管理の全てを私にまかせている。
「・・・・・・あそこ」
私は部屋の一画を指差す。
姉さんは包帯と消毒液を持って来て、私の手を治療する。
「応急処置よ。ちゃんと病院に行きなさい」
「はい」
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