自殺

8/9
前へ
/63ページ
次へ
包丁は私の手を完全に貫通して、まな板に突き刺さっていた。 痛みが強くなる。 ・・・・・・それでも、まだ足りない。 私は包丁の柄を握り直すと、勢いよく引き抜いた。 「っ―――あぁっ!!」 ・・・・・・つい、声が漏れた。 その声に気が付いて姉さんが振り向く。 さっ、と顔が青くなる。 「何をやっているの!?」 姉さんは私の隣に駆け寄ると、心配そうに私の手を見る。 あぁ、姉さんもこんな顔するんだ・・・・・・。 「何を考えているの!?」 姉さんが私の腕を自分の髪をまとめていたゴムで縛りながら、私を呵りつける。 「・・・・・・痛かったら、また泣くのかと思って」 「泣く?」 「さっき私が泣いたのは、きっと痛かったせいだから・・・・・・」 正直に話す。 姉さんははぁ、と溜め息をつくと、私をソファーまで連れていき、そこに座らせた。 「包帯はどこ?」 姉さんは家の管理の全てを私にまかせている。 「・・・・・・あそこ」 私は部屋の一画を指差す。 姉さんは包帯と消毒液を持って来て、私の手を治療する。 「応急処置よ。ちゃんと病院に行きなさい」 「はい」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加