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「転校生…?」
その噂を聞いたのは
転校生が来る朝だった。
「そっ!なんか、すごいイケメンらしいよ?」
僕の前の席の
伊野尾慧。
僕なんかとは違って
王子様気質なイケメンくん。
この学校は男子校だけど
男子や他校の女子に
すごくモテている。
「ふーん…、」
転校生が来る事に
僕は興味がなかった。
僕はただ、この学校生活を
静かに尚且、密かに暮らしたいだけだから。
「大ちゃーん?」
ぼーと考えていれば
目の前で手がヒラヒラと振っているのに気付いた。
「あ、ごめん…」
いつものように
仮面の笑顔をつける。
もう、何年、笑ってないだろう。
「はあっ、」
ふいに漏れた溜め息。
僕の席は、
窓側の一番後ろ。
外を見上げれば
今日は天気が良くて
空が綺麗だった。
「おーい。席…着け。」
いつもの先生の声。
ザワザワとする教室。
本当、いつもと変わらなかった。
だから、気付かなかった。
僕の席の隣が
空席だと…――――――――。
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