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「意味、分かんない。」
あの後、
伊野ちゃんにしつこく聞くも
「大ちゃんがチューしてくれたら教えてあげる!」
と、からかわれるだけで結局、教えてくれなかった。
「有岡ー、腹減った。」
昼休みのチャイムが鳴り響いた瞬間、
のそっと起き上がって
第一声がこれ。
「はい、これあげます。」
高木に渡したのは
俺の弁当。
「は?これ、お前のじゃん?」
「僕、具合悪いんで…
食べていいですよ。」
具合悪いのは
本当。
朝から、吐き気が止まらない。
「大丈夫かよ?
風邪引いてんじゃね?」
フワッと香る甘い匂い。
額に伝わる熱。
目の前の、
高木の顔。
「っ、あ…、」
思い出す。
あの日
出来事。
"なあ、コイツ…女みたいな顔してっからヤれんじゃね?"
"あ、それ賛成!"
"俺もー!ちょうど溜ってたんだよー…、"
"っ、あ"あっ!!!"
「っ!!」
精一杯、高木を押した。
「ってえ、なにすん…有岡?」
小刻みに震えてしまう
身体。
ふいに零れる大粒の涙。
「あっ、ごめっ…、」
震えて声が出ない。
"デカい声出すんじゃねぇよ"
「っひ、や…、」
どんどん、と
頭の中に流れ始める
忘れ去りたい記憶。
「有岡…、悪い。」
「えっ?」
がしっと腕を掴まれて
思いきり引き寄せられて
目の前には
高木の胸板だった。
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