テンプレートな始まり方は春空の彼方に

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今から15年程前のお話。 1人の女と化け狸が交わりましたそうな。 まあそいつが化け狸だと知ったのは身篭った子供が生まれた時だそうです。 そしてその化け狸と人間の間に生まれた子供が何を隠そうこの僕、本田健太だったりする訳で。 隠れてない?まあその辺はプロローグ的なものなんでご愛嬌ということで。 「ふぁー……ねむい死ぬ……ダメだこれ絶対日光浴びたら死ぬ」 朝からネガティブでどこかファンタジックな発言を撒き散らす。 それにしてもねむい…… 春爛漫の今日は最高でいて最悪のポカポカ日和。春のポカポカ陽気には絶対に睡眠導入成分が含まれてます。じゃないとこんなにねむくならないですよ。 そんなことを考えながらも別の事が頭の中を徘徊する。 新しい町。新しい生活。 大体そんな感じの言葉。 かというのもつい先日遥々この町へ越してきたばかりな訳でして。 今まで祖父祖母(もちろん母方の)の家がここ『明日葉町』から車で片道3時間掛かるとこに有りそこへ住まわせてもらってまして。 越してきた理由は……母の仕事の都合と家庭の事情ってやつです。 母はデザイナー関係の仕事をしているらしく僕の入学を機に越して来た訳です。はい。 それにしても新しい環境ってもんはすぐには慣れないものです。 ここらも都会というには何か足りないのかもしれませんがつい最近まで舗装された道なんか踏んだ事のない僕にとってはさながらテレビやゲームやマンガの中の世界みたいです。 ……さすがの田舎でも電気はあったんでテレビぐらいありますよ? 道が舗装されてない程の田舎でしたけど水車発電やらの設備が整ってましたんで。 新しい環境かぁ……。 まぁ 向こうでも友達一人としていなかった僕には一切関係のない話なんですけど。 我ながら冷めた人生です。
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