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気がつけば、僕はいつもと同じ朝を迎えていた。
天井へと伸ばされた、何も掴んでいない手だけが、それが夢だったことを示唆していた。
あの時、僕は確かに貴方の手を掴んだはずだったのに。
なぜ、僕は現実に戻ってきてる?
朧げに残る、途切れそうな記憶を手繰り寄せる。
そして、それはジグソーパズルのピースがハマっていくように、全ての記憶が呼び起こされて。
僕は、すべてを、思い出した。
あの時、僕は貴方の手を確かに掴んでいた。
だけど貴方は僕の手を、無理矢理ほどいて。
僕を現実に――突き放したんだ。
「昴琉君、どうか君だけは、――生きてください」という言葉とともに。
全てを思い出した僕の頬に、何か温かいものが伝って、それは重力に従って床に落ちていった。
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