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…なのに、あの日レインボーブリッジを血に染めていたのは、貴方の方だった。
――信じられなかった。
――夢を見てるのかと思った。
…だけど、力なくしがみつく貴方の姿に、これが紛れもない現実だということを、疑う余地もないほどに知らしめられていった。
…彼が最後の力を振り絞って、囁くように告げる。
「僕は…、君を……、――――。」
それは僕がとっくに諦めてしまっていた、決して貰えるはずのない言葉だった。
――そして、それが彼の最後の言葉だった。
それから、僕はもう何も話さなくなった貴方を、ただ抱きしめていた。
近くで名前を呼ぶ神戌の叫び声も、まるで聞こえないほどに――。
そして、突然僕は腕をつかまれたかと思うと、貴方を残したままのレインボーブリッジから引き離されていた。
「星史朗さん――!!」
その瞬間、僕はありったけの力で手を伸ばしていた。
だけど貴方へと伸ばした手は届くことなく、声の限りに叫んだ言葉さえ崩れ落ちるレインボーブリッジの断末魔に掻き消されていった。
そして東京湾に架かる『結界』は、彼の亡骸を抱きしめたまま、――崩壊した。
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