お姫様を裏切れない

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休み時間にはクラスの女の子たちがユリの机の周りを囲んだ。クラスのリーダー格のあやちゃんは、ユリを自分のグループに入れたくて仕方がないみたいだった。でも、ユリはそれを無視してあたしにばかり話しかけてきた。 あたしは戸惑って、あやちゃんが気を悪くしないかヒヤヒヤしていたのだけれど、本人は全くお構いなしだった。 「お家どこ?一緒に帰ろう」 放課後にそう声をかけられて、連れ立って校門を出た。 他愛のないことを話しながら、初めてクラスの友達と公園に寄り道をした。 ユリは色んなことを話してくれた。 お母さんと2人で暮らしていること。男の子が苦手なこと。引っ越してくるまではバレエやヴァイオリンを習っていたこと。 あたしもお姉ちゃんがいることや、ピアノを弾いていることを話した。 夕陽が公園を真っ赤に染めるまで、あたしとユリは夢中でおしゃべりをした。 別れ際に、どうしてあたしに声をかけてくれたのか聞いてみた。するとユリは目を細めて、唇の端を持ち上げた。少し照れたみたいな微笑みだった。 「だって、すごく可愛いから」 ユリとあたしのはじまりだった。
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