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霊園の入口には稲や小川が立っていて、誰か知り合いが訪れれば、こちらに連絡がくる手筈になっていた。
昼過ぎに、森くんの家族や親戚が来た。両親と2人の妹、千鶴ちゃんと花梨ちゃん。
その直後には泉美寧。
背後から見た彼女の肩は、小さく震えているようだった。
あたしの携帯には野々森から、何度もメールが入っていた。彼は朝から沙弓の家に張り込んで、彼女の動向を追っている。
『神谷と合流した』
『レストランに入ってく』
『今、映画館に向かってる』
野々森の苛立ちが伝わってくる。
森くんの命日に、沙弓は神谷くんとデートをしている。
あたしはそれを一々美晴に伝えたけれど、彼女は頷くだけだった。
会話もなく、ただただ立ち尽くすだけ。
何時間待っただろう?
予報外れの雨まで降ってきた。携帯が震える。
『おい、もう無駄だ。吉川は墓参りなんか行かねえよ』
あたしもそう思う。
だけど美晴は頑なに、そこを動こうとはしなかった。
コンビニから帰ってきた優からビニール傘を受け取って、美晴に差し出した。
「………美晴、沙弓は神谷くんに送られて、もう家に帰ったって」
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